
映画に出てくる【悪役】。
最近の作品には、そのバックグラウンドを描いている場合も多い。
故に映画に深みがでてくるというのは間違いない
そんな【悪役】のバックグラウンドを勝手に想像してしまうというのも映画の見方としては面白い。
実際先にも説明した通り、作品ないでバックグラウンドを描いていることが多いため、勝手に想像するとは言わないかもしれないが、想像するには情報量が少ない場合や特定の人にだけわかるような描写もある。
当記事は、そんなバックグラウンドについて少し触れようと思う。
記事内にはネタバレも含む。
目次
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実写版シンデレラのトレメイン夫人
シンデレラに登場する継母のトレメイン夫人。
彼女は登場してから最後の最後までシンデレラにひどく当たるのだが、
その当たり方は気持ちいいほど振り切っている。
そんな彼女は、何度か感情が揺れるような描写がある。
映画を鑑賞してもらったらわかるのだが、彼女もまた、人と同じような人生を歩んできてはいない。
人を貶めるようなキャラクターというのは相応にして、過去や現在に理不尽な経験をしていることが多く、その腹いせに主人公にひどくあたるというのは定番中の定番設定である。
シンデレラの継母であるトレメイン夫人も例外ではないことが容易に想像がつくところである。
こういったキャラクターの設定に関しては、劇中で語られると感情移入もしやすいのだが、そうでない場合ももちろんある。
ただ、そのヒントやきっかけになるような描写やセリフがある場合が多いので、極端な悪役の登場する作品には気を配って鑑賞することをお勧めする。
キャラクターの裏設定が見えてきたとき、悪役も大変であると感情移入ができると、その作品の見え方も変わってくる。
最新策を見て過去作を振り返ってみる ネタバレあり
ハリーポッターのスネイプ
ハリーポッターシリーズに登場する悪役の中でも代表するキャラクターと言えば
スネイプこと セブルス・スネイプ であろう。
とあることが理由でハリーとは因縁の中であり、かわいく言えばことごとく意地悪をしてくるキャラクターである。
そんなスネイプだが、あることをきっかけに驚くべき程愛するキャラクターへと変貌する。
それは、映画の最終章である「死の秘宝part2」でスネイプが絶命する寸前にハリーに見せた、自らの記憶によるものである。
スネイプは、ハリーの母親であるリリー・ポッターに恋をしていた。
しかしリリーはハリーの父、ジェームスと結婚してハリーが生まれた。
ジェームスはかつて自分をいじめていた人物であり、そのジェームスの息子であるハリーを嫌っていた。
ところが、ハリーは自分が愛してやまなかったリリーの息子でもあり、葛藤するのだった。
その後、選ばれた子供であるハリーポッター命を、ダンブルドアの後押しもあり葛藤しながらも守ことを決意。
表では意地悪なキャラクターであったが、裏で身を削って守っている描写が出てくるのである。
それを知った瞬間、スネイプへの気持ちがかわり、過去作を見返したとき、作品の印象は一気に変わってしまうであろう。
ターミネーターT800 のその後
有名な映画【ターミネーターシリーズ】で、ジョン・コナーの抹殺指令を受けて未来からやってくる、
アンドロイドである。
未来で人間とAIが戦争を起こし、人間を滅ぼすためにAIが過去にターミネーターという暗殺用のロボットを送り込み、未来でヒューマンレジスタンスのリーダーを務める【ジョン・コナー】を抹殺しようとする物語である。
この暗殺のために送り込まれた【ターミネーター】をT800という名称なのだが、
アーノルド・シュワルツェネッガーが演じており、作品を追うごとに立場が変わる
・ターミネーター1 ジョンを抹殺しに訪れる敵
・ターミネーター2 ジョンを守ために訪れる、味方
・ターミネーター3 ジョンを未来で抹殺し、その後過去に送られジョンを守る敵から味方に
・ターミネーター4 完全に敵
・ターミネーター5 味方
・ターミネーター6 ジョンを抹殺し、指令を終えて機能停止 その後、味方へ
作品ごとに立場がかわるのだが、ベースにある設定としてはジョンを抹殺するために敵側が開発したアンドロイドであるため、基本的には敵である。
ところが、このアンドロイドに少し変わった感情移入ができてしまう描写がある。
2019年に公開された「ターミネータニューフェイト」での冒頭のシーン。
それは、現代でジョン・コナーを抹殺し、指令を終えたT800が登場するのだ。
演じるのは変わらずアーノルド・シュワルツェネッガーで、まるで思い悩むかのように暮らしている。
ただの暗殺目的で描かれていた【ターミネーター】の存在に新たな価値が生まれた瞬間である。
暗殺指令を受けていたアンドロイドはあくまでも指令通り動いていただけで、その後は敵にも味方にもなりうる存在であるということ。
それを踏まえて作品を見るとなんとも不思議な感覚に陥ってしまう。
ターミネーターは作品ごとにT800が敵なのか味方なのかがはっきり描かれているため、感情移入に迷うことはないが、製造された当初や、その後を想像すると少し作品の見え方が変わるかもしれない。
専門分野の事情やちょっとした生活の事情を考える
これは特殊な見え方で、一定の人にしかわからないものである。
結論は、その悪役のキャラクターと同じ経験をしたことがある、あるいは類似の立場や経験がある場合である
上記で紹介したシンデレラの継母、トレメイン夫人を例にしてみよう。
旦那さんと死別し、頭の悪い娘二人に囲まれ、再婚した旦那さんも先に逝ってしまう。
普通に考えたらかなり過酷な経験である。
それ故誰かに当たりたくなるのは当然のことで、シンデレラが聡明で人格が高ければ、より劣等感を抱くのも当然であると考える。
あまりいい経験ではないが、もしこのトレメイン夫人と同じ経験をした人がこの作品を鑑賞したらどう感じるだろうか。
おそらくトレメイン夫人に感情移入ができ、彼女を見ただけで悲しくなるのではなかろうか。
他にも、気難しいキャラクターや、意地悪なキャラクターがいたとして、そのキャラクターがどんな仕事しているか、どんな暮らしをしているかを見たとき、そのキャラクターと同じ立場の人が見たらやはり感情移入してしまうのではないかと思う。
少し特殊な考え方ではあるが、こういった見方もあるというお話。
映画とは、描かれている以上のものを見つけることでより価値が見いだせる
これは映画だけに限らず芸術というものは見えること以上のことを感じることに意味があるのではないだろうか。
絵画を見たと、色合いがキレイであったり、大きくて迫力があるというな感想だけでは少しもったいない。
アーティストの意図やテーマを自分なりに感じることができればより絵画の価値に触れることができる。
その感動に正解はなく、あなたが感じたことが正解である。
映画も同じ、「面白かった」「迫力があったね」「感動した、泣けた」だけではもったいない。
何が面白かったのか、どうして泣けたのか、その理由を知ることでより価値の高いものになると私は思う。
それは、映画の作りのこだわりに気づけたか、登場人物の感情を読み取ることができたのか、
いずれにしてもあなたの感受性が豊かになり、細部に気づくことができる目を養えているからに他ならない。
そうしてすこしずつ自分自身により深みが出れば、人生が少しかわるのではないだろうか。