圧倒的孤独は見る者の心をわしづかみにして離さない

監督:リュック・ベッソン
‐メインキャスト‐
レオン【ジャン・レノ】
マチルダ【ナタリー・ポートマン】
ノーマン・スタンフィールド【ゲイリー・オールドマン】
1994年公開
上映時間:2時間12分(レオン完全版)
- 総合 ★★★★★
- 演技 ★★★★
- 緊迫感 ★★★★
- 感動 ★★★
あらすじ
ニューヨークのとあるアパートで、殺し屋であるレオンと少女マチルダは同じ建物に住んでいた。
あるときマチルダが買い物に出かけている間に、麻薬密売人たちが家に押し入り、家族を皆殺しにしてしまう。
帰宅するマチルダは家に入らずそのまま自宅を通り過ぎレオンの部屋へと駆け込んだ。
家族が襲われる一部始終を見ていたレオンは、一時マチルダをかくまうが、すぐに出て行けというのだが
行く場所がないマチルダは、復習をしてもらうか自身を殺し屋に育ててほしいと懇願する。
一人の殺し屋と、家族を失った少女はこの後どう生きていくのだろうか。
こんな時におすすめ
1匹狼の殺し屋と、家族を殺されてその復習に燃える少女とのちょっと変わった恋愛映画。
恋愛といっても、どちらかというと家族愛に近い内容であり、ハードボイルドとハートフルさが行き来しているような感じです。
メインは殺し屋と麻薬密売人との対決もので、ある程度のアクション性や爽快感もある。
人間ドラマでありながら、少し爽快な気分になりたい時におすすめ
緊迫するシーン
麻薬捜査官のノーマン・スタンフィールド役であるゲイリー・オールドマンの演技が恐ろしくリアルである。
自信も麻薬中毒者の役がとにかくリアルで、登場するたびに何をしでかすかわからない恐怖感と緊迫感は見ごたえそのものである。
この演技を見るだけでも十分楽しめるほどである。
名作中の名作
名作映画の中に必ず入ってくるタイトルで、迷ったらこれを見ればいいとさえ思うところである。
非常にシンプルなストーリーでありながら、巧妙に創られた登場人物の関係図が面白く、かなり良くできた脚本である。
特に、黒幕の中枢が黒幕としてはありえない組織であったり、殺しの指示役の立ち位置が非常にややこしく、見るものの緊張感をより際立たせてくれる。
演技や演出も目を見張るものがある。
現代のような演技や撮影技術が進化した現代でもこれほど良質な映画は撮れないのではないかと思うほどの出来である。
もちろん、感情移入できる部分や、社会問題などの細かな内容含み、見ている観客を飽きさせない。
本来映画というのは、少しだれたシーンを入れて、盛り上がるシーンとのギャップで観客をより映画に入り込ませるのだが、そういったシーンもあまりないままあっという間に終わってしまう、2時間の映画にほとんど無駄がないように思える。
アフタートーク(ネタバレあり)鑑賞後の閲覧おすすめ
名作映画と検索するとどんなサイトやランキングにも名を連ねる、何か映画を見て満足したい時はレオンを見とけば解決すると思われるほどである。
一昔前の世代の人ならわかるかもしれないが、主演のジャン・レノ(レオン)やナタリー・ポートマン(マチルダ)、ゲイリー・オールドマン(ノーマン・スタンフィールド 敵のボス)
圧倒的な存在感と演技力を持つ俳優たちの若かりし頃の作品である。
そしてこの作品を監督したのが、リュック・ベッソン。
フランスの出身の監督で、このレオンがハリウッド進出作品である。
さて、表向きは少し変わったラブストーリーであるが、根底にあるテーマは孤独であると感じる。
というより、見ていて孤独を感じてしまうである。
レオンとマチルダが二人三脚で活動する中、コミュニケーションもしっかりとっているようであるが、
お互いに、心の中にある孤独がぬぐえない描写が幾度となく描かれている。
例えば、レオンが過去の恋人の話をしたシーンである、恋人の父を射殺してしまい、もう普通の生活には戻れないという描写は今も一人孤独と戦っているということ。
これは麻薬捜査官のノーマン・スタンフィールドも同じ、彼の過去こそ描かれていないが、たくさんの人を殺め、もう戻ってこれなくなった人間であり、その人となりは孤独であった人間の成れの果てであることは容易に想像がつく。
そして、現状も圧倒的孤独である。
仲間といることが多く一人で行動するシーンこそ少ないが、映画の中での行動や
言動、周りからの評価がそれを物語っている。
この孤独であることを読み取ることこそが、今作が今日まで名作であり続ける理由ではないかと考える
人は、生まれて死ぬまで生涯孤独であるとよく耳にする。
それは、家族といようが、恋人といようが、友達といようが関係なく、だれ一人例外なくそうである。
この、孤独というのは、心の奥にある孤独のことであるが、けしてネガティブなことだけではなく、
時に前向きなことでも孤独になりうることがある
例えば、発表会の本番前の緊張する場面。一緒にいる仲間や応援してくれている家族がいたとしても
その緊張に耐えることができるのは本人だけなのである。これは孤独である。
レオンはそんなあらゆる顔や色を持つ孤独を感じることのできる作品で、そこに感情移入をすることができる。
今作の孤独はさみしいもので、けしてポジティブなものではないが、多かれ少なかれ誰もが持つ心の孤独である。
もちろん、ストーリーがよく、俳優の演技、さまざまなことが優れているからこそではあるが、
この孤独という心情に観客の無意識がアプローチできるだけの内容であることも間違いない。
リュック・ベッソン監督の作品は、どの作品も、良くも悪くも孤独を感じる。
そしてその孤独というのは、決してタイトルやセリフに現れず、ストーリーや演出にそっと忍ばせているのである。
それをごく自然に観客に感じさせる映画の作り方は、まさに名監督と言うにふさわしいと私は感じる。
リュック・ベッソン監督の作品は、少し癖のあるストーリーのものが多いが、レオンを見て感動したあなた、
是非他の作品ものぞいてみてはいかがだろうか。